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人狼の話です

【本決定反対】リコールします

運悪く確霊になってしまったり、初回に統一占を被弾して確白になった人間は、まとめ役の仕事を押し付けられることが多い。

まとめ役は損な役回りだと思う。

票を数えなければならないし、思考を出すと人外に利用されかねないと沈黙を求める層も一定数存在するし、かといって独自の決定を出そうものなら独裁者呼ばわりされてリコールをかけられるし、そして票を数えなければならない。

私自身結構なリコール芸人なので、余計にまとめ役に対してマイナスイメージを抱いているのかもしれない。

票を数えなければならないし。

 

ところで、G国では意思決定に際して多数決が用いられることが多いように思われる。

たしかに多数決は村民の納得を得やすいという点で優れているが、それが常に民意を反映できているとは限らない。

 

灰XYZのうち、誰か1人を処刑する場面を考えてみる。

A「私はX>Y>Zの順で黒いと思う」【▼X▽Y】

B「俺はZ>X>Yかな」【▼Z▽X】

C「ワシもZ>X>Yだと思うのう」【▼Z▽X】

D「オラはY>Z>Xだべな」【▼Y▽Z】

E「僕はDに賛成!」【▼Y▽Z】

 

集計結果

X…▼▽▽

Y…▼▼▽

Z…▼▼▽▽

 

単純多数決に従うなら、まとめ役は処刑先をZに決定するはずだ。

しかし、この決定に対してAは少なからず不満を持つだろう。

Zを吊るくらいならYを吊りたかった、と……。

Aがもし【▼Y▽Z】と提出していた場合、処刑先はYとなっていただろう。

しかし、その票はAのX>Y>Zの順で黒いという推理を反映したものにならない。

このような票の投じ方は「戦略投票」と呼ばれる。

Wikipedia:戦略投票

いわゆる「民意」が不鮮明となるだけでなく、人狼ゲームにおいては狼が投票行動と推理とを捻じ曲げて接続する体のいい理屈となってしまう。

 

例:

狼(Xにロック偽装をかけてるけど、その通りに投票すると仲間のYが吊られてしまう……よし)

狼「本当はXが黒いと思ってるけど、通らないからZに投票するよ」

 

このような狼の行動が想定可能であることは、戦略投票を行う村人に対し、同じ疑いをかけられることをも意味する。

つまり、多数決によって決定を下す場合は、村民の戦略投票を抑制しつつ、民意をより正確に拾い上げられる方法が必要だと考えられる。

 

いわゆるpt制多数決は、外の世界でボルダ得点と呼ばれるものに近い。

Wikipedia:ボルダ得点

Wikipediaの記述を引用すると"多数決主義の選挙制度ではなく、世論の一致を重視した選挙制度"らしいので、長期人狼との親和性は非常に高い。

反面、多数決が有している戦略投票に対する脆弱性の解決にはならない。

 

フランス大統領選などで採用されている二回投票制は、先程例に挙げた狼の戦略的投票を抑制するには有効だろう。

ざっくり説明すると「候補者のうちで過半数の票を獲得したものが現れなかった場合、上位2名で決選投票を行う」というものである。

Wikipedia:二回投票制

この方式は民意を正確に反映させやすく、かつ戦略投票の余地が少ない点で優れている。

決選投票の存在により「通らないからZに投票する」といった言動の根拠を封殺できるからだ。

この方式で決定が下される村も稀に見かけるが、常に採用するには参加者の負担が大きいという問題もある。

 

コストの問題をクリアしようとすると候補に上がるのがIRV(Instant-Runoff Voting)という方法だろうか。

Runoffとは決選投票を意味し、要するに一回の投票で決選投票までやっちゃおうという投票方式である。

日本語に訳すと「優先順位付投票制」となるらしい。

Wikipedia:instant-runoff voting

 

IRVでは候補者を選ぶのではなく、ランク付けを行う。

最初に挙げた状況でIRVを行うと、以下のようになる。

 

A【1:X 2:Y 3:Z】

B【1:Z 2:X 3:Y】

C【1:Z 2:X 3:Y】

D【1:Y 2:Z 3:X】

E【1:Y 2:Z 3:X】

 

ここから一位票の最も少ないXを除外し、再度集計を行う。

 

A【1:Y 2:Z】

B【1:Z 2:Y】

C【1:Z 2:Y】

D【1:Y 2:Z】

E【1:Y 2:Z】

 

こうすると過半数を獲得するのはYとなり、決選投票を行なった場合と同じ結果が得られる。

IRVも戦略投票を完全に防げるわけではないが、少なくとも単純多数決やpt制多数決よりは抑制力が高いと言えるだろう。

 

あえて問題点を挙げるならば「希望は第2まで絶対出して!」とお触れを出しても第1希望しか出さない村人の存在や、候補者がある程度絞られていないとうまく機能しない点だろうか。

最近ではあまり見かけないGS(グレースケール)を提出させ、そのまま投票とすれば解決できるように思われるが、まとめ役の処理がいささか煩雑になってしまうようにも思われる。

 

民主主義の魂を持ったまとめ役ならば採用してもいいのかもしれない。

そうでないならば、多数決を装って票を恣意的に解釈し、自分の通したい決定を本決定にしてしまうのが楽なんじゃないかなとも思う。

下手をこけばリコールされてしまうけれども。

 

まとめ役は損な役回りだと思う。